第24回 日本流通学会賞・第11回 日本流通学会論文賞
学会賞
該当作なし
学会奨励賞
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秦 小紅 著『現地市場における国際総合小売企業の発展プロセス研究-成都イトーヨーカ堂の事例を中心にして-』(五絃社、2019年9月発行)3600円
秦 小紅 著『現地市場における国際総合小売企業の発展プロセス研究-成都イトーヨーカ堂の事例を中心にして-』(五絃社、2019年9月発行)3600円
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受賞の理由
本書は、近年流通研究において一領域を築くに至っている小売国際化に関する、理論的・実証的研究業績である。小売国際化に関する先行研究を丁寧に整理した上で、特に成都イトーヨーカ堂に焦点を定め、現地供給業者の協力を得ながら実施された市場志向構築のプロセスを明らかにしている。検証の方法として社員や現地企業関係者へのインタビューが採用され、市場志向を実現していくプロセスが立体的に再現されている。
ただ、市場志向の「市場」そのものについての分析は手薄であり、またシングルケースから導き出された結論には普遍化へ向けた課題も多い。
したがって、残された課題に対する研究のさらなる深化を願って,本書に第24回日本流通学会・奨励賞を授与することとした。
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石 鋭 著『改革開放と小売業の創発-移行期中国の流通再編-』(京都大学学術出版会、2020年3月発行)2800円
石 鋭 著『改革開放と小売業の創発-移行期中国の流通再編-』(京都大学学術出版会、2020年3月発行)2800円
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受賞の理由
本書は、戦後中国における小売業の発展過程について、百貨店とスーパーという2つの業態についての経営史的なアプローチを通じて明らかにする力作である。特に、「計画経済期」を含む長期にわたる歴史的検証は、中国における流通史を知る上で貴重な資料となっている。また、業態発展のプロセスについて、企業家的営みと社会経済的な制度的変化との関連を意識しながら展開される考察は、流通研究における方法として興味深い方向性を示していると言える。
ただ、流通経済論あるいは既存の小売業態論の課題との接点は必ずしも明らかではなく、理論的貢献は限定的なものにとどまると言わざるを得ない。
以上から、今後の研究のより一層の発展を期待して、本書を第24回日本流通学会・奨励賞とすることで結論を得た。
論文賞
該当作なし