本書は、近年流通研究において一領域を築くに至っている小売国際化に関する、理論的・実証的研究業績である。小売国際化に関する先行研究を丁寧に整理した上で、特に成都イトーヨーカ堂に焦点を定め、現地供給業者の協力を得ながら実施された市場志向構築のプロセスを明らかにしている。検証の方法として社員や現地企業関係者へのインタビューが採用され、市場志向を実現していくプロセスが立体的に再現されている。
ただ、市場志向の「市場」そのものについての分析は手薄であり、またシングルケースから導き出された結論には普遍化へ向けた課題も多い。
したがって、残された課題に対する研究のさらなる深化を願って,本書に第24回日本流通学会・奨励賞を授与することとした。
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